バトルスが3人となった後にリリースされた「グロスドロップ」。バトルス史上でも名盤とされるこのアルバムは、傑作として広く全世界に受け入れられ、評判を呼びました。このアルバムはメンバーのタイヨンダイ・ブラクストン在籍時から製作されていたものですが、途中で脱退となり、メンバー3人が1から構築しなおしたという経緯があります。
その経緯の中で、どのようにして楽曲を製作していくかという葛藤と、より自由な音楽性を追求できるようになったという解放感が入り混じったものとなっており、逆にその不安定感に成り立つ音の輝きがバトルスの新たな魅力として認識されたのです。
そのような名盤となった「グロスドロップ」を、さらに多くのリミキサーの手によって新たに再構築しようという試みで製作されたのが「ドロスグロップ」であり、バトルスメンバーの思惑どおりさまざまなジャンルの音楽テイストが絶妙なバランスで織り交ぜられたものとなっています。
これにより、オリジナルと別物になるどころかさらなる輝きをもって世に放たれることとなり、「バトルスの美学」とまで言わしめるアルバムに仕上がっています。
では、バトルスがオリジナル「グロスドロップ」を再構築してもう1つの名盤を作ろうとした思惑は何だったのでしょうか。
もともとリミックスとは音楽業界において多用されている企画であり、あらゆる音楽ジャンルで用いられている手法です。このさじ加減によって、オリジナルとは全く別のジャンルのものになったり、またテイストが若干違ったものになったりと、そのリミキサーごとの色が強く出るものとなります。そのさじ加減は手掛けるアーティストによっていろいろであり、他人のものを大幅に自分の方に寄せてしまうか、オリジナルを尊重しながらアレンジを加えていくかはリミキサー次第ということになります。
バトルスは、このリミックスという作業において、必ずしも別物にしてくれと各アーティストに頼んだわけではないといえます。もともとバトルス自体がロックやテクノ、エレクトロにダブといったジャンルにはこだわらない音楽製作を行っていることもあって、リミックスを外部に依頼したからといって「別物になる」という概念自体がなかったことも考えられます。
また、バトルス自らリワークしたものであると言われるとおり、「ドロスグロップ」に起用したリミキサーたちは全てメンバー自ら選出したそうです。だからといって似通った仲間たちだけを集めたわけでもなく、各ジャンルの音をうまく融合させた音楽作りを行っている気鋭のアーティストを厳選し、別物にもならずただのアレンジ違いにもならないという絶妙な融合感を構築するのに成功したのです。