多様なテイストのバトルスの評判

メンバー脱退後の楽曲再構築が課題となったバトルスのオリジナルアルバム「グロスドロップ」は、その混沌とは裏腹にバトルス史上大傑作と言われるほどの評判となりました。その一因としては従来よりさらに自由になった音楽性と、外部からのゲストボーカルが吹き込む新たなテイストによってより大きな広がりを持つことができたためといえます。

 

そのリミックス盤が「ドロスグロップ」ですが、さまざまなジャンルのサウンドを操るアーティストたちが手掛けたリミックス楽曲はそれぞれに個性を放っているだけではなく、テクノやダブ、パンクといった要素を多様に織り込むことによってさらなるコアな部分と内に秘める混沌を浮き彫りにする形となっています。

 

そのような形になったことは、ひとえにオリジナルである「グロスドロップ」がポップは広がりとともに混沌を秘めたものであったからであり、その内面性をより引き出す音楽性を持ったアーティストが「ドロスグロップ」に集結したのです。

 

つまり、土台である「グロスドロップ」が持つ性質から混沌としたものであるということで、メンバーがこのオリジナルを手掛けた心境や環境も模索や葛藤が計り知れなかったことがうかがえます。

 

そんな中、「グロスドロップ」がリリースされる直前の2011年4月3日、バトルスは日本の音楽フェス「SonerSound Tokyo 2011」の2日目に出演することとなります。このとき、日本では未曾有の大災害をもたらした東日本大震災が起きた直後であり、メンバーは日本に来ることをためらったといいます。その際の心境を、バトルスメンバーのデイヴ・コノプカが語っています。

 

デイヴいわく、自らのバンドを「バカなロックバンド」と評しており、そのようなバンドが今大変な状況にある日本に来てプレイを行うことは失礼に当たると考えたといいます。

 

しかし、当時バトルス自体もバンドの屋台骨であったタイヨンダイ・ブラクストンが抜けたことによって混迷を極めており、そんな中で苦心惨憺して「グロスドロップ」を仕上げた直後だったのです。そのような苦しい時期であり混乱をきたしていながらも懸命に前に進む状況が、バンドの現在と日本の状態に重なったと言います。

 

そのため、どこか共通点を感じて来日を決意し、結果最高のパフォーマンスを行った結果日本のオーディエンスからも高い評価を受けることとなりました。

 

震災によって元気をなくしていた日本と自らの境遇を重ね合わせ、そこでライブを行うことで日本に貢献できたと感じたようで、また日本のファンたちも同様にバトルスから元気を分け与えてもらうことができました。