バトルスが自らゆかりの深いアーティストまたはリスペクトするアーティストたちを一堂に会して製作したリミックスアルバム「ドロスグロップ」は、バトルスの再構築のきっかけとなった「グロスドロップ」を全曲外部アーティストの手腕でリミックスしたものです。
「ドロスグロップ」はまさに「グロスドロップ」なしでは成立していないアルバムであり、アルバム名をもじっただけのネーミングであるとおり、もう1つの世界のアルバムのような形となっており、各音楽ファンからの評判も高いものとなっています。
そんな「グロスドロップ」を製作した当時は2010年から2011年。そしてリリースが2011年4月27日となるわけですが、その直前、日本で行われる音楽フェス「SonarSound Tokyo2011」にバトルスが出演することとなりました。
メンバー全員、日本で起きた大惨事・東日本大震災直後に日本に訪れることにためらいがあったと言います。その当時の心境をメンバーの1人であるイアン・ウィリアムスが語っています。
震災直後ということで来日に抵抗があったとのことですが、日本側からぜひというオファーがあり快諾したとのこと。その状況を、アメリカで2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件の後に重ね合わせてイアンは語ります。
9.11の後も、アメリカではさまざまなイベントなどが随所で行われたそうです。絶望と不安、混沌の中でもそのように周囲が一体となることによってさらなるパワーが生まれ、連帯感が増したという9.11の経験を思い出し、日本でも絶望から立ち直るためにたくさんのイベントやパーティを行えば人々のつながりがより強化し、希望につながるのではと考えたのです。そのためにも、あのような状態の日本だからこそライブを行って人々を盛り上げていこうと思ったのだそうです。
また、この時期はバトルスにとっても大きな転機を迎えており、メンバーのタイヨンダイ・ブラクストンの脱退によって再構築を余儀なくされたアルバム「グロスドロップ」の製作と、とりあえず作ってみた音源をいかにしてライブで再現するかという課題を持っていました。
バンドとしても混沌とした時期であったにもかかわらず、見事なパフォーマンスで日本のオーディエンスを魅了し、さらにタイヨンダイ在籍時の過去の曲は全て封印してのライブという挑戦も行いました。
このようなバンドの過渡期に日本でパフォーマンスをやらなければと思ってもらえたことは日本のファンにとってはありがたい話ですし、バトルスとともに成長を遂げようという気持ちにいたることができたかもしれません。